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2017.04.28

仮想通貨とブロックチェーン技術

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1.はじめに
平成29 年4 月1 日に資金決済に関する法律、いわゆる仮想通貨法が施行されました。
近年、仮想通貨は決済手段としての可能性が注目される一方で、規制する法律は存在せず、その法的位置付けは必ずしも明らかではありませんでした。そのため、国際的にマネーロンダリングやテロに利用されるリスクや、仮想通貨交換所の破綻による利用者被害などの問題点を抱えており、「仮想通貨と法定通貨を交換する交換所を登録・免許制にするべき」、「顧客の本人確認や記録保存の義務等の規制を課すべき」との声が高まっていました。
今回は法律の施行に加えて、消費税法上の取り扱い、仮想通貨の中核技術であるブロックチェーンの基礎知識や、その技術が持つ可能性についても考えてみたいと思います。


2. 仮想通貨法 ①仮想通貨の定義
仮想通貨が下記の通り定義され、プリペイドカード等の決済手段とは異なるものとされました。


一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの


二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
この法律は、仮想通貨もその通貨同等の財産価値を持つと定義するものであり、正式な決済手段として認められることになりました。



3.仮想通貨法 ②仮想通貨交換業者への諸規制
法律の主要な項目として、以下が挙げられます。


(1)仮想通貨交換業者の登録制
コンプライアンス体制や財産的基礎等の条件を満たした上で、仮想通貨交換業者に内閣総理大臣への登録を義務づけています。


(2)仮想通貨交換業者に対する業務規制
仮想通貨交換業者は、利用者と自己の金銭または仮想通貨を分別して管理しなければならないとされ、定期的にその管理の状況について、監査法人等の監査を受けることが義務付けされます。


(3)仮想通貨交換業者に対する監督
仮想通貨交換業者は、帳簿書類等の作成や、監査報告書を添付した報告書の提出、立入検査等の監督規制を受けることになります。


4.消費税法上の取り扱い
仮想通貨の消費税法上の取り扱いについても、見直しが行われました。従来、仮想通貨は「課税資産の譲渡等」とみなされ課税取引として扱われていましたが(海外との取引は不課税)、平成29 年度税制改正大綱では、消費税法上の取り扱いを非課税とする改正が盛込まれました。
消費税法においても、仮想通貨は決済手段のひとつとして認識されるようになりました。


5.ブロックチェーン技術
仮想通貨の中核をなす技術がブロックチェーンです。ブロックチェーンは、取引の履歴を記録するデータベースを一ヵ所で管理するのではなく、多くの場所で同じデータベースを保持しながら管理して、信憑性のある合意に到達することを可能にする技術です。データベースを中央で管理するのではなく、分散的に管理することから、次のような特徴を有しています。


① 記録を共有し、相互に検証しあうことで、記録改ざんや不正取引を防ぐことができる。世界中に点在するPCにデータが存在するため、データの消去も不可能。


② 相互に信頼関係の無い不特定多数の参加者の間で、直接取引が実現できる。


③ 取引記録を集中管理する大規模コンピューターが不要となり、システム管理コスト・運用コストが割安になる。


6.今後の動向
(1)一般消費者への影響
先日、大手家電量販店において、仮想通貨による決済サービスを試験導入すると発表されました。現在の現金以外の支払手段としてはクレジットカードなどが主流ですが,今回の法制化を受けて,仮想通貨が今後さらに普及することが見込まれます。


(2)分散型管理の応用‐貿易業務の簡易化
仮想通貨以外のブロックチェーン技術の応用例としては、これまで膨大な時間と労力を要してきた国際貿易取引業務の効率化が挙げられます。国際貿易取引においては、さまざまな取引が多くの関係者間で行われるため、①取引が複雑、②信用状などの紙の書類が多く、郵送やEメール等のやりとりに時間がかかるという課題がありました。
分散型による管理を特徴とするブロックチェーン技術により、取引関係者が情報を同時に共有することを可能となり、貿易事務にかかる時間とコストを劇的に削減することが期待されます。


(3)その他
これら以外の分野としては、投資、土地管理、投票など多岐にわたるものが挙げられ、ブロックチェーン技術の可能性は広がりを見せています。


7.おわりに
今回は、昨今注目を集めている仮想通貨にかかる関連法規と、その中核の技術であるブロックチェーンについて説明しました。インターネットがそうであったように、ブロックチェーン技術は、社会の仕組そのものに大きな変化をもたらす可能性を持っています。
なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。


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