1. はじめに
近頃、パナマ文書の流出によりタックスヘイブンが大きな話題となったのは、記憶に新しいかと思います。
このような背景から、今回はタックスヘイブンや税制に着目し、ご紹介します。
2. タックスヘイブンとは
法人税や所得税が課せられないまたは低税率で課せられる国や地域を指し、”租税回避地”と訳されます。ケイマン諸島をはじめとするカリブ海諸国、香港、シンガポール、ルクセンブルグ等面積が小さく、資源に恵まれない国や地域が多く、こういった国や地域は、積極的に企業や富裕層の資産を誘致しています。
3. 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)
タックスヘイブン(租税回避地)といわれる国、地域に所在する子会社等を通じて租税回避行為を規制するための制度として、外国子会社合算税制が制定されています。一定の税負担の水準(20%)未満の外国子会社等の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税を行なう制度となっています。
しかしながら、外国子会社等がたとえ現地での租税負担が低くても、租税負担軽減のために存在しているのではなく、その存在に経済的合理性が認められるのであれば、合算課税を行う必要はありません。
外国子会社等が以下の全ての条件(適用除外基準)を満たす場合には、合算課税の対象とならないとされています。
(1) 事業基準 :主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと
(2) 実体基準 :本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること
(3) 管理支配基準 :本店所在地国において事業の管理、支配および運営を自ら行っていること
(4) 次のいずれかの基準
- 所在地国基準:主として本店所在地国で主たる事業を行っていること
- 非関連者基準:非関連者との取引割合が50%超であること
また、一定の税負担の水準(20%)未満の外国子会社等が得る資産運用的な所得については、適用除外基準を満たす場合でも、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税を行います。
なお、外国子会社合算税制は、タックスヘイブン対策税制とも呼ばれています。
4. 国際的な税務の動向
租税回避については、国際的な問題となっており、この問題に各国が協調して取組むため、2015年10月5日、OECDによりBEPS対策プロジェクトに関する最終報告がなされています。この最終報告を受けて、日本を含む各国の税制改正・租税条約の改正が今後行われていくと見込まれています。
現在、国税庁は租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換に力を入れています。また、タックスヘイブン国との情報交換ネットワークの拡充を図っており、租税情報交換協定が結ばれた国や地域も増え、積極的に情報交換ができるようになってきています。なお、外国子会社合算税制においても、企業の進出に伴い、通常の事業活動を行っている場合であっても外国子会社合算税制の対象となるケースも増えてきています。
以上のことから、日本親会社としては海外子会社の課税状況等に、今後もより一層の注意を払っていく必要があるものと思われます。
5. おわりに
今回のニュースでは、「タックスヘイブン」について取り上げました。
なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。
(参考文献)
財務省ホームページ
平成27年度税制改正大綱
平成28年度税制改正大綱
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