ニュース詳細

2025.12.29

令和8年度税制改正大綱(外国企業・日本進出企業向け)

ニュース一覧

1.はじめに

令和7年12月19日に、政府与党より令和8年度税制改正大綱が公表されました。
本大綱は、日本経済の成長力強化と国際競争力の向上を目的としており、日本進出を検討する外国企業にとっても重要な内容となっています。

本稿では、外国企業・日本進出企業の視点から、法人税、消費税、所得税、および国際課税に関する改正点を整理します。
なお、内容は今後の国会審議により変更される可能性があります。

2.主な改正点

【法人税】
日本法人設立後の設備投資や事業拡大に活用できる税制優遇措置が拡充されます。
初期投資負担やキャッシュフローへの影響を抑えた日本進出が可能となります。

① 日本進出時の初期投資・設備投資への影響
日本国内で行う高付加価値型の設備投資を対象に、即時償却または高い税額控除を認める新たな設備投資促進税制が創設されます。一定規模以上の投資を行う外資企業にとって、日本進出時の初期投資負担やキャッシュフローへの影響を抑えた事業立ち上げが可能となります。

② 研究開発・成長投資・日本拠点機能強化への影響
AI・半導体・バイオ等の戦略分野を対象に、研究開発税制が拡充され、新たに「戦略技術領域型」の税額控除が創設されます。日本拠点での研究開発やHQ機能強化を検討する外資企業にとって、日本を開発拠点として位置付けるメリットが高まります。

③ 日本法人設立後の運用・ガバナンスへの影響
設備投資や賃上げに消極的な企業については、一部の租税特別措置の適用を制限する仕組みが強化されます。外資系日本法人においても、投資計画・人件費政策と税務戦略を連動させた中長期的な運用設計が重要となります。

【消費税】
日本進出時の取引形態やビジネスモデルに影響する消費税制度が見直され、外資企業の事業設計や価格戦略に活用できます。

①国境を越えた取引・デジタルビジネスへの影響
国境を越えて行われる通信販売のうち、1万円以下の商品についても販売者に消費税の納税義務を課す制度が導入されます。また、デジタルプラットフォームを介する物品販売では、取引を仲介するプラットフォーム事業者へ納税義務を転換する制度が導入され、外資系EC・SaaS・D2Cビジネスの取引設計に影響します。

②日本拠点設立・不動産・実体構築への影響
非居住者が日本国内の不動産を取得・売却する際に支払う仲介手数料等について、消費税の課税対象とする見直しが行われます。これにより、外資企業による日本法人設立、オフィス取得・賃借などの初期コストやキャッシュフロー計画に影響が生じます。

③国内取引・運用フェーズでの実務対応
消費税インボイス制度に関する経過措置が見直され、2割特例終了後は売上税額の3割を納税額とする措置が2年間限定で適用されます。また、免税事業者からの仕入に係る8割特例は段階的に縮減され、令和13年9月末をもって終了する予定であり、日本法人設立後の取引管理・消費税実務への影響が拡大します。

【所得税】
日本進出時の駐在員・役員報酬に影響する所得税制度が見直され、外資企業の人材戦略にも影響がある変更となっています。

①基礎控除等の引き上げ:
基礎控除が58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保障額も65万円から69万円へ引上げられます。一方で高所得者層の課税強化も進み、駐在員・役員報酬の設計や税負担に影響が生じます。

②各種非課税枠の見直し(福利厚生関連):
物価上昇を踏まえ、食事補助や通勤手当(マイカー通勤等)に係る所得税の非課税限度額が引き上げられます。これにより、駐在員を含む従業員への福利厚生を給与課税を抑えた形で提供しやすくなり、報酬設計の柔軟性が高まります。

【国際課税】
日本進出時のグループ構造や国際取引に影響する国際課税制度が見直され、外資企業の税務戦略にも影響がある変更となっています。

① グローバル最低課税(Pillar Two)への対応
OECDのBEPSプロジェクトに基づき、グローバル最低法人税率15%(Pillar Two)への対応が本格化します。多国籍企業では、日本法人を含む各国拠点の実効税率管理に加え、解散した外国関係会社や実体の乏しい子会社の取扱いも含めたグループ全体の税務管理が重要となります。

② 国際取引・移転価格・グループ構造の整合性
移転価格税制や租税回避防止の観点から、国外関連者取引に関する文書化や説明責任が一層重視されます。あわせて、実体を伴わないペーパーカンパニーや形式的なSPCを含むグループ構造の見直しが求められ、日本法人を含めた取引・組織設計の再検討が必要となります。

③国境を越える役務提供・PE認定リスクへの影響
国境を越えた役務提供やデジタル取引の拡大を背景に、恒久的施設(PE)認定や源泉課税リスクへの対応が重要となります。日本進出前後の外資企業にとっては、日本での活動実態や、休眠・清算済み子会社を含む過去の事業関係が課税判断に影響する可能性にも注意が必要です。

3.おわりに

日本進出を検討する際には、税制改正を踏まえた法人設計・投資計画・税務体制の検討が不可欠です。
なお、今回の解説は、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。ご不明な点等ございましたら、お気軽に下記URLのお問い合わせよりご相談下さいませ。
お問い合わせ | アークアウトソーシング株式会社 (ark-outsourcing.jp)

参考文献:
令和8年度与党税制改正大綱
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/212129_1.pdf
(アクセス:2025年12月25日)

ページの先頭へ