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2025.12.12

小規模事業場におけるストレスチェック義務化と新たなハラスメント防止義務について

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はじめに
今月のニュースレターでは、2026年に施行予定の重要な法改正を2点ご案内いたします。いずれの改正も、事業主の責務がより明確化されるものであり、職場運営に大きな影響を与えることが予想されます。本号では、それぞれの改正内容の概要と、事業主が留意すべきポイントをまとめてご案内いたします。

1. 50人未満の事業場にも今後義務化される
    ストレスチェック制度
令和8年4月1日に施行予定の労働安全衛生法改正により、従業員50名未満の小規模事業場においてもストレスチェックの実施が今後義務化されることが厚生労働省より公表されています。
この改正は、精神障害に係る労災請求件数や小規模職場におけるメンタルヘルス問題の増加を背景として行われたものです。これまで努力義務とされていた事項が、50人未満の事業場にも義務として課されることになります。

1) 事業場に求められる対応 
 ・年1回のストレスチェックを実施すること
 ・高ストレス者へ医師面接指導を実施すること
 ・結果を踏まえて職場環境を改善すること
 ・実施体制の整備およびプライバシー保護を徹底すること

2)留意点
 ・地域産業保健センターの支援を活用できる場合があります。
 ・外部委託による実施も可能で、早めに体制を整えることでスムーズな運用が期待できます。

2. ハラスメント防止対策として事業主が講ずべき措置の
    義務化
令和2年6月(中小企業は令和4年4月)から、事業主に対しハラスメント防止措置を講ずることが義務化され、その具体的内容が明確化されております。
さらに、令和7年に公布された「労働施策総合推進法等の一部を改正する法律」により、従来認められていたハラスメントに対する防止措置義務に加え、新たなハラスメントが事業主の防止措置義務として追加されます。(令和8年以降施行予定)

1)従来からのハラスメント
 ・パワーハラスメント
 ・セクシャルハラスメント
 ・マタニティハラスメント
 ・育児・介護ハラスメント

2)新規追加されたハラスメント
 ・カスタマーハラスメント(顧客・取引先によるハラスメント)
 ・就活セクハラ(求職者等へのセクハラ)

ハラスメント対策は引き続き重要な労務管理上の課題となっています。
あらためて、現在求められているハラスメント防止のための事業主の措置についてご案内申し上げます。

3)事業主の主な対応義務
   1.方針の明確化および従業員への周知・啓発
   ・ハラスメント行為を禁止する旨を就業規則や社内規程に明示すること
   ・相談者への不利益取扱いを禁止する方針も併せて記載すること
   社内研修や掲示物、イントラ等による周知徹底が求められます。
   2.相談窓口の設置と体制整備
   ・社内に相談窓口を設定し、担当者の対応方法を明確化すること
   ・担当者への研修や、外部窓口の案内など相談しやすい体制を構築すること
 相談受付方法(面談・メール・電話等)を定め、社員に周知します。

3.事後の迅速かつ適切な対応
   ・相談があった場合は速やかに事実確認を行い、関係者へのヒアリングを実施すること
   ・行為が認められた場合は注意指導、配置転換、職場環境の調整など必要な措置を講ずること
関連する部署へのフォローや再発防止策の導入も求められます。

4.プライバシー保護および不利益取扱いの禁止
     ・相談内容や関係者情報は厳重に管理し、不要な共有はしないこと
相談した従業員や調査に協力した従業員への不利益な対応(評価・配置・処遇等)は禁止されています。

これらの防止措置を怠った場合、刑事罰はありませんが、行政指導の対象となり得るとともに、民事上の損害賠償責任を問われるリスクやレピュテーションリスクが生じ得ます。

おわりに
今回の法改正により、企業規模にかかわらず、従業員のメンタルヘルス対策がより重要視される流れとなっております。
ARK社労士法人では、就業規則改正のお手伝い、運用準備、管理者・従業員向け説明会・研修の実施などのサポートをしております。
どうぞお気軽にご相談ください。
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