はじめに
従業員が常時10名以上の事業所では、就業規則の作成・届出が法律で義務付けられています。
一方、10名未満の事業所であっても、就業規則を整備しておくことは会社を守る上で有効です。
労務トラブルやハラスメントへの関心が高まる今、就業規則の未整備は思わぬリスクにつながる可能性があります。
今月は、その代表的なリスクをいくつかご紹介します。
なお、ここに挙げる内容は一例であり、実際には事業所の状況に応じてさらに多様なリスクが想定されます。
1.懲戒処分ができない
就業規則に懲戒の種類や事由を定めていない場合や、就業規則が労働者に周知されていない場合には、問題社員への処分が無効とされ、会社が敗訴するリスクがあります。
2.服務規律を明確にできない
ハラスメント防止や勤怠ルールなどを規定できず、注意をしても従業員から不当な扱いと受け取られ、トラブル化するリスクがあります。
例えば、従業員の服装や勤務態度について、就業規則上の服務規程に基づかない注意を行った場合、ハラスメントと受け取られるリスクがあります。
3.副業に関するルールを定められない
無許可の副業に対応できず、従業員の健康管理が困難となるほか、競業・情報漏洩等のリスクが高まります。
就業規則に「副業は許可制」と定めておくことで、企業が適切に管理できる体制を整えることが可能です。
4.定年制を適用できない
就業規則に定めがなく、かつ雇用契約書にも記載がなければ、従業員が辞めない限り雇用が続くことになり、
結果として人件費の固定化や世代交代の停滞を招くリスクがあります。
5.病気休職者への対応が不明確
休職期間や復職条件を定めていないため、労使間のトラブルにつながる恐れがあります。
6.助成金の活用が困難
多くの助成金は就業規則の整備を前提条件としており、そもそも申請資格が得られなくなるケースがあります。
7.成績不良者への給与調整が困難
降格や給与減額などの処遇は、就業規則に明記されていなければ実施できません。
※就業規則や労働契約に明記された根拠がない減給処分は、労働紛争の際に違法と判断されることが多いです。
おわりに
就業規則の整備は、従業員10名以上の事業所では法的義務であり、10名未満の事業所においてもリスク管理の観点から早期整備が推奨されます。
問題が発生してから作成すると「不利益変更」と争われるリスクがあるため、平時からの準備が重要です。
就業規則は単なる書面ではなく、会社を守り、従業員との信頼関係を築くためのルールブックです。事業規模に関わらず、早めの整備・見直しをご検討ください。
ARK社労士法人では、就業規則の新規作成及び改定のご依頼を承っております。お気軽にご相談ください。
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