1. はじめに
近年、企業を狙った海外送金詐欺が急増しています。「請求書の振込口座変更」や「緊急の支払依頼」など、一見もっともらしい依頼で送金を促すケースが多発。実際に過去の送金先を装って詐欺口座へ送金してしまう被害が相次いでいます。さらに、米ドル建て送金では米国OFAC(外国資産管理局)の制裁規制も関係し、注意を怠ると送金がブロック・凍結されるケースもあります。今回は、実際の事例も踏まえて、海外送金時に押さえておくべき注意点と対応策をご紹介いたします。
2. 最近増えているリスク – どんな手口か?
(1) 請求書すり替え型の詐欺
• 取引先になりすまし、新しい振込口座を案内する
• 「緊急」「極秘」といった文言で迅速な送金を促す
• メールの乗っ取りや、似たドメイン(例:lとiの置き換え)で正規メールに見せかける
→ 過去取引のある相手でも油断できません。
(2) OFAC制裁による送金ブロック
• 米ドル送金は米国の銀行を経由するため、OFACの制裁対象チェックが行われます
• 受取人や関係者が制裁リスト(SDNリスト)に載っていると、送金がブロックされ資金が動かせなくなることも
(3) 銀行側の審査強化
• 国際的なマネーロンダリング対策(AML)の一環として、送金理由や契約書の提示を求められるケースが増加
• 説明が不十分だと送金が遅れる、場合によっては返金となる
3. チェックすべき具体的なポイント
送金前に、以下の点を必ず確認しましょう:
• 振込口座が過去の取引と一致しているか
• 請求書に記載された口座と異なる口座が案内されていないか
• 不自然な理由で口座変更が依頼されていないか
• 送金依頼が急を要すると強調されていないか
• 送金依頼メールの送信元が正規アドレスか(ドメイン・スペルミスの有無)
• 米ドル送金の場合、送金先や関係者がOFAC制裁リストに該当しないか
• 送金内容に源泉税や租税条約適用の確認が必要ないか
疑わしい場合は、必ず登録済みの連絡先へ電話で直接確認することが鉄則です。
4. 実際にあった事例
• 国内製造業A社:取引先を装った偽メールで口座変更を案内され、数千万円を送金。後日、メールが乗っ取られていたことが判明。
• 商社B社:米ドル送金が米国中継銀行でブロック。最終受取企業が第三国の制裁対象企業と関係していたことが理由だった。
5. いま取るべき対応策
• 複数人での送金チェック体制(ワンオペを避ける)
• 口座変更時は必ず電話確認(メール記載の番号ではなく、登録済み番号へ)
• OFACや各国制裁リストのチェックをルーティーン化
• 銀行への説明資料を事前準備(契約書・請求書・送金理由)
• 税務面の確認(源泉所得税・租税条約届の有無)
6. おわりに
海外送金のリスクは年々複雑化しています。
「今まで問題なかったから大丈夫」という思い込みが、一番危険です。
ARK Outsourcingでは、海外送金の実務対応、OFAC制裁チェック、銀行対応、税務面の確認までトータルでサポートしています。
海外送金やリスク管理についてご不明な点があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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https://www.ark-outsourcing.jp/contact/参考文献
米国財務省外国資産管理局(OFAC):
Home | Office of Foreign Assets Control(令和7年7月25日アクセス)
金融庁:
「マネー・ローンダリング等及び金融犯罪対策の取組と課題(2025年6月)」の公表について:金融庁 (令和7年7月25日アクセス)
国税庁:源泉所得税の概要
No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金|国税庁(令和7年7月25日アクセス)
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